名古屋高等裁判所 昭和43年(ネ)593号 判決 1969年3月11日
主文
原判決を取消す。
被控訴人は控訴人らに対し金一三五万一、八六三円及びこれに対する昭和四〇年一一月六日から右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
控訴人らその余の請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じこれを二分し、その一を控訴人らの、その余を被控訴人の負担とする。
この判決は控訴人ら勝訴部分に限り仮に執行することができる。
事実
控訴代理人らは「原判決を取消す。被控訴人は控訴人らに対し金二九六万二、二八九円及びこれに対する昭和四〇年四月一日より右完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴代理人らは控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の陳述、証拠の提出、援用、書証の認否は控訴代理人らにおいて当審鑑定の結果を援用したほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
理由
一、当審における鑑定の結果を勘案してなした当裁判所の判断は資産の部における土地の評価につき左記二のとおり附加訂正し、且つその結果資産の部における合計金額、亡紋一の持分額を後記三のとおり、亡紋一の請求金額を後記四のとおりそれぞれ訂正し、被控訴人主張の相殺をなした結果につき後記五のとおり附加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、原判決理由摘示中一ないし六(但し右訂正部分をのぞく)及び別紙目録を引用する。
二、資産の部における土地評価について(原判決理由二(2))
成立に争のない乙第一号証(財産目録)には土地は金一、二三六万八、〇〇〇円と評価され、被控訴人は右評価は取得価格(薄価)によつた旨主張するけれども、持分払戻の際における土地の評価は取得価格によるべきでなく時価によるのが相当であると解せられる。
ところで原審鑑定人柘植鉦太郎、早川友吉、後藤勇、近藤信衛、当審鑑定人山下三郎の各鑑定の結果は区々でありいずれによるべきか一概に決せられないけれども、右各鑑定の結果を彼此勘案した結果、最高額である近藤鑑定、最低額である後藤鑑定並びに鑑定基準時を異にする山下鑑定を除外した二鑑定の平均額たる金四、七八〇万円をもつて相当と認める。
三、資産の部における合計額及び亡紋一の持分額について(原判決理由二(6))
以上の次第で右(1)の資産の部合計八、一三七万五、三〇六円(原判決引用)に前記二の土地の時価四、七八〇円、(3)の立替金八二万五、一五九円、未収金一〇万五、〇〇〇円(原判決引用)計九三万〇一五九円を加えると資産の部は合計金一億三、〇一〇万五、四六五円となる。
そして負債の部(1)の七、八五六万六、二二六円に(5)の未収金三三六万円、中村センター勘定一、〇三三万二、二〇六円(右(1)、(5)原判決引用)を加えた合計九、二二五万八、四三二円を前記資産の部合計額より控除すると純財産額は金三、七八四万七、〇三三円となる。
よつて亡紋一の持分額はその三一・三分の一・五である金一八一万三、七五六円となること計数上明らかである。
四、亡紋一の請求金額について(原判決理由五)
亡紋一の持分額一八一万三、七五六円に貸金二二万五、〇〇〇円を加えると、金二〇三万八、七五六円となり、これから債務金四三万三、一二一円を控除すると金一六〇万五、六三五円となるから被控訴人は亡紋一に対し右金一六〇万五、六三五円を支払う義務がある。
五、被控訴人主張の相殺の結果
亡紋一の被控訴人に対する債務金二五万三、七七二円を対当額で相殺すると、紋一の請求額の残額は一三五万一、八六三円となる。
六、よつて、被控訴人は亡紋一の相続人たる控訴人らに対し右金一三五万一、八六三円及びこれに対する本件訴状送達の翌日なること記録上明らかな昭和四〇年一一月六日から右完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務あること明らかである(控訴人は亡紋一の脱退の翌日から遅延損害金の請求をなすが、被控訴人は請求をうけないかぎり遅滞に陥らない)から、控訴人らの本訴請求は右の限度において正当として認容すべく、その余は失当として棄却すべきである。
以上の次第ゆえ、右と結論を異にする原判決は維持できないから取消すべきものとし、民事訴訟法第三八六条、第九六条、第九二条、第九三条、第八九条、第一六九条第一項に従い主文のとおり判決する。